算数と数学39 つるかめ算(2)
- suugakusha
- 2月20日
- 読了時間: 8分
算数と数学39 つるかめ算(2)
こんにちは!
今回は、前回紹介した例22と例23の解説を通して、「定番」問題の考え方と、似て非なる問題の考え方のお話を進めていきます。
例22
自動車と自転車と三輪車が合わせて30台あります。タイヤの数を数えたら全部で84個でした。次の場合の自動車、自転車、三輪車の台数を求めなさい。
(1)自動車と三輪車の台数が等しいとき。
(2)自動車の台数が自転車の台数の3/5(5分の3)のとき。
(3)自転車が三輪車より3台多いとき。
台数を「揃える」解き方
1台あたりのタイヤの数は、自動車4個、自転車2個、三輪車3個です。(すべて共通)
(1)この内、問題文に台数の関係が表されていないのは自転車です。ここをしっかりと読み取りましょう。
この、台数の関係が表されていない自転車が30台あるものと考え、実際のタイヤの数84個との差を求めます。
2×30=60
84-60=24・・・[1]
ここからが難しいのですが、
自動車と三輪車は台数が同じなので、それぞれ1台ずつのタイヤを合わせて7個(4+3=7)と考えます。
これを2台「1組」でタイヤ7個と考える訳です。
さて次に、自転車のタイヤは1台2個です。
上の台数と揃えて自転車も2台「1組」で4個と考えます。
ここまで来るとそろそろ解き方が分かってきます。
「自動車と三輪車」の1組、「自転車2台」の1組のそれぞれ「1組分の差」が3個
(7-4=3)。
[1]で求めた24を、この3で割ると…何が出るのでしょう?
24÷3=8
この8は、自転車2台分を「1組」と考えたときの値、つまり8「組」であり、それを自動車と三輪車1台ずつの8「組」に取り替えた数です。
よって、自動車は8台(本当は1×8=8の式が必要なことを忘れずに!)、三輪車も8台(1×8=8)となり、自転車は14台(30-8×2=14)となることが分かります。
確かめましょう。
4×8+2×14+3×8=84
合っていますね。
さて、この解き方の注意点は、24÷3=8の8をそのまま自動車や三輪車の台数と勘違いしてしまうことです。この(1)のような同数の問題ならそれでも答えが出ますが、これは8台ではなく、2台を1組と考えた8組の値であることをしっかりと理解しなければいけません。
これについては次の(2)の解説を見ると分かりやすいでしょう。
(2)(1)と同様に、今度は台数の関係が表されていない三輪車が30台あるものと考え、実際との差を求めます。
3×30=90
90-84=6・・・[2]
今度は自動車を3台、自転車を5台の8台で1組とします。表されている割合(や比、この場合は3/5)をなるべく簡単な整数に合わせます。
このとき、自動車3台と自転車5台の8台でタイヤは1組22個(4×3+2×5=22)。
三輪車も8台に揃え、それを1組とすると、タイヤの数は1組24個(3×8=24)。
1「組」あたりのタイヤの数の差は2個です(24-22=2)。
[2]から
6÷2=3
これは3台ではなく3「組」、すなわち24台(8×3=24)の三輪車を、自動車3台と自転車5台を1組とした3組と取り替えることで、タイヤの個数は揃います。
このとき、自動車は9台(3×3=9)、自転車は15台(5×3=15)、三輪車は6台(30-8×3=6)となります。
確かめましょう。
4×9+2×15+3×6=84
合っていますね。
(3)まず、自転車の台数と三輪車の台数を揃えます。例えば自転車を3台減らすと、台数は27台(30-3=27)、タイヤは78個(84-2×3=78)になります。
あとは(1)と同様に解けます。
台数の関係が分からない自動車が27台あるものとし、タイヤの個数の差を求めます。
4×27-78=30
から30個と分かります。
次に自転車と三輪車1台ずつ1組でタイヤ5個、自動車2台を1組としタイヤ8個。その差1組あたり3個で上の30を割ると、自転車と三輪車の組が10組(30÷3=10)と出ます。
よって、三輪車は10台(1×10=10)、自転車は13台(1×10+3=13)、自動車は7台(30-10-13=7)と分かります。もちろん必ず確かめを行いましょう。
理解してしまえばそこまで難しい問題ではないので、これで十分でしょう。
もちろん別解がいくつかあります。詳しくは説明しませんが、例えば、台数の関係が表されているものの「平均」を用いる解き方の場合
(1)であれば、自動車と三輪車のタイヤの平均3.5[(4+3)÷2=3.5]と自転車の2を用い、普通の「つるかめ算」の計算で
(84-2×30)÷(3.5-2)=16
と、自動車と三輪車の台数の和16が出ます。この後はこれを1:1に分け・・・(この後は簡単な割合の計算16×1/2や比分配を用いて答えを出します。以下同様です)
(2)であれば、自動車と自転車の平均
(4×3+2×5)÷8=11/4(4分の11、割り切れるので2.75でも良い)
を求め、同様に
(3×30-84)÷(3-11/4)=24
と、自動車と自転車の台数の和24が出ます。この後はこれを3:5に分け・・・
(3)も、自転車と三輪車のタイヤの平均2.5[(2+3)÷2=2.5)]を求めますが、自転車の台数を3台減らした後の、台数27台、タイヤ78個を用いて
(4×27-78)÷(4-2.5)=20
とすることで、自転車と三輪車の台数の和が20と出ます。ただしこれは自転車の台数を三輪車の台数に合わせた後のものなので、三輪車は10台(20×1/2=10)ですが、自転車はそれに3台加えるなどを行い、答えを求めていきます。
「平均」を用いる解き方の場合、考え方は普通の「つるかめ算」とまったく同じです。この方が簡単、と思う方も多いでしょう。ただし、「平均」には小数や分数が出ることもあるので、計算部分には気を付けなければいけません。
また、最初の解き方の「単位」の部分(個数や人数、台数など)を「揃える」(例えば、同じ「2台に揃える」「8台に揃える」や、(3)ではどちらの解き方でも「自転車の台数と三輪車の台数を揃える」)と言う考え方を利用する解き方は、「つるかめ算」だけではなく様々なところで用いられるため、理解し身に付けておかなければいけないものとなっています。
そして・・・実はこのタイプの問題、面積図を利用することができます。特に(1)(2)は「比」と「面積図」をうまく使うと、あっという間に解けてしまいます。
(3)は自転車と三輪車の台数を揃えなければいけない分、「比」だけの問題よりも高度な問題であることに気付くでしょう。
その「比」と「面積図」の一部をここで公開しようと思います。
今後他にも、このブログで初めて明かすものもありますが、当時と違い、「線分図」や「面積図」だけ知っていても意味がありません。
[ただし、これを営利目的で使うことはご遠慮願います。「比」と「面積図」の解法は様々な問題に応用可能なものですが、東京にいる頃に勤めていた予備校にも一部しか渡していません。もちろん教え子は除きますw 当時は素早く簡単に点数の取れる解き方を作り出すのが日課となっていました。]
およそ40年ほど前に作ったものですが、併せてお楽しみください。
さて、どうでしたか?
驚くほど簡単に答えが出せてしまいましたね。
このように、「ほとんど何も考えなくても答えだけは求められる」と言うのが、「比」と「面積図」の「最大の利点でもあり、最大の弱点でもある」訳です。当時はこの「比」と「面積図」を使いこなすことで大半の「面積図」系の問題を解くことができたのですが。
もちろん「比」を用いる解き方はすべて小6以降にしか教えてはいけません。
では次の問題はどのように解けば良いのでしょう。困ったことに3種類のものの中に、関係性が表されているものがありません。当然「面積図」などは役に立ちそうもありません。
例23
1個200円のチョコレートと1個180円のクッキーと1個30円のキャンディを30個買い、4000円支払いました。それぞれ何個ずつ買いましたか。
ただ、何となく「つるかめ算」の基本が使えそうと思ったらまずはやってみましょう。
最初、1個30円のキャンディを30個買ったとします。するとあと3100円(4000-30×30=3100)余ってしまいます。なぜこれだけ余るかと言うと、実際にはキャンディより高いチョコレートやクッキーも買ったからです。
そのキャンディ1個を、チョコレートやクッキーと取り替えると
200-30=170
180-30=150
それぞれ1個あたり170円、150円増えます。←ここまでが「つるかめ算」の最初と同じ。
つまり、170円と150円で3100円となるようにすれば良い訳です。
え?その個数も分かっていないのにどうやって求めるの?
と思う方もいるかと思います。
前回解説をした、2024年度「女子学院中学校」の、最初に「奇数」か「偶数」かを考える問題を思い出してください。10の位の数字で調べました。
それと同じように、今度は10の位の7(170の7)と5(150の5)の組み合わせで0(3100の右から2番目の0)を作るように調べれば良いのです。
このような問題は、「整数の性質」と言う単元に含まれ、一般的には1の位の組み合わせを(上の問題では17と15の2つの数字で310を作るように)考える問題になります。
それでは0を一つ減らして、17と15で310を作ることとします。
一方の1の位が5なので、その倍数の1の位は5または0にしかなりません。
そして合計の310の1の位は0なので、7に何かをかけて5または0にしなければいけません。よって
7×(1の位が0)、または、7×(1の位が5)を調べていけば良いことが分かります。
ここで7や5を17と15に戻して考えます。
310-17×0=310←310÷15=20余り10(割り切れない)
310-17×5=225←225÷15=15(割り切れる)
310-17×10=140←140÷15=9余り5(割り切れない)
310-17×15=55←55÷15=3余り10(割り切れない)
これ以上は310を超えるので、17と15の組み合わせで310になるものは、
17×5=85と15×15=225の和だけであることが分かります。
つまり、チョコレートを5個、クッキーを15個、キャンディを10個(30-5-15=10)
買うことで成り立つはずです。
確かめましょう。
200×5+180×15+30×10=4000
合っていました。
このような問題は「整数の性質」の単元に含まれていますが、(この問題では0を一つ除いた後の)1の位に上のような特徴がない問題の場合、表を書いて調べたり、規則性を見つけ答えを求めたりするものもあります。
その場合、答えが1通りではなく、何通りかを答えさせたり、すべてを求めさせたりする問題もあり、今度は「整数の性質」ではなく、「場合の数」(一部「数列」)の単元に含まれていたりもします。
同じような問題に見えても、まったく違う単元に含まれる問題がそこかしこにあることが「算数」の深さ、難しさでもあります。それら「取り違える可能性のある問題」を集めて、解き方、考え方の違いを教えるのもプロの仕事になります。
さて、最後に前回と同じ2024年「女子学院中学校」入試問題からもう1問。
解説は「算数と数学41」で行う予定です。ただ、「算数と数学41」は「算数と数学40」をしっかり読んでないと理解するのが難しくなっていますので、併せてご覧いただきたいと思います。
問題
□にあてはまる数を入れなさい。
クラスの生徒に消しゴムを配ります。全員に10個ずつ配ると32個足りないので、先生と勝敗がつくまでじゃんけんをして、勝った人には11個、負けた人には7個配ることにしました。勝った人は負けた人よりも5人少なかったので、消しゴムは9個余りました。
クラスの人数は□人、消しゴムは全部で□個です。
次回更新は3月20日(木)頃を考えています。
それではまた!!
ブログ内の入試問題はすべて使用許諾取得済みです。
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