算数と数学37 線分図系問題のまとめ
- suugakusha
- 2024年12月19日
- 読了時間: 6分
更新日:2月8日
算数と数学37 線分図系問題のまとめ
こんにちは!
今回は、これまでの未解決問題の解説をしていこうと思っています。
それではまずは「算数と数学 32」例6から。
例6
3mの棒を長さの違う2本の棒に切り、その2本の棒を深さが同じ池に入れてみたところ、一方の棒はその長さの1/4、もう一方の棒はその長さの1/7が水面から出ました。池の深さは何cmでしょう。
この例6は、塾やテキストによってどこに含まれるかが異なる問題です。「割合」で簡単に解くことができますが、実は「比」を用いれば「分配算(比分配)」に含めても良い問題になります。
どう言うことでしょうか。
まずは「割合」で解いてみましょう。
池の深さは一方の棒の3/4(4分の3、以下同)、もう一方の棒の6/7であることは分かります。
(1ー1/4=3/4、1ー1/7=6/7)
このとき、池の深さを「もとにする量」の「1」に入れ替える(一つに揃える)と
一方の棒は池の深さの4/3、もう一方の棒は池の深さの7/6です。
池の深さを「もとにする量」の「1」とすることで、棒の長さの和3mが「比べられる量」になります。その和の割合が、4/3+7/6=15/6となることから
3m=300cm
300÷(4/3+7/6)
=300÷15/6
=300×6/15
=120
これで池の深さが120cmとなることが分かりました。
(棒の長さが、それぞれ160cm、140cmとなり、それぞれの棒の1/4、1/7が水面から出ると、池の深さの120cmになることも確かめましょう)
もしこれを「相当算」に入れ、全体量を「1」とする「線分図」をかかせても無意味なことが分かります。それぞれの棒がもとになっているので、異なる「1」が2つ出ることで何も生まれません(結果的に分子を揃える、または分母と分子を入れ替えることになります)。
「分配算(差分配)」の問題で、「もとにする量」と「比べられる量」を「入れ替える」ことに慣れさせておくことで、このように「割合」としても当たり前に解けるように育てることが実践力に繋がります。
「和差算」と「差分配」で学ぶことは本当に大切なので、今小学校4年生の生徒は、「算数と数学 31」「算数と数学 32」で書かれていることを参考にして、そこだけ繰り返し学んで欲しいと思います。
次に「比」を用いた解き方です。
3/4と6/7の分子を⑥に揃え、2本に分けた棒をそれぞれ⑧と⑦にします。
分子の⑥が池の深さですね。よって
⑧+⑦→300
①→20
⑥→120
これで終了です。
「比」は「整数」を用いることで、同じ部分の「最小公倍数」を取れば良いと言う利点があります。この解き方を用いると、結果的に「分配算(比分配)」になっていることが分かると思います。
線分図にするとあっという間に解けてしまいますので下のPDFをご覧ください。
「解き方」によってどこに含めるかが変わることもあり、どこにも含まれない場合もあることが分かります。
さて次に、「算数と数学 32」の例7や「算数と数学 36」の例19やのような問題です。
例7は一見「分配算」に見え、例19は一見「相当算」に見えます。が、問題文の微妙な違いから、それらとはまったく異なる問題であることに「気付く力」が必要です。
ただ、この「気付く力」を養うことが一番難しいので、初めから何でもかんでも「線分図(や面積図等)」を使えば何とかなる、と言うのが良くある教え方です。見た目すぐに「○○算」と分かる問題が多かった時代にだけ通用する方法ですね。
確かに線分図や面積図は有効なアイテムとして利用できます。ただ、何もかもそれらを用いる必要はありません。「線分図」や「面積図」など、どうせ中学以降はすべて忘れますが、本質を見抜く脳力(気付く力)を付ける学び方は生涯に亘る糧になります。
「線分図」や「面積図」などは、それを用いることで楽になるとき、用いなければ難しいとき、に使うために学ぶ。ただそれだけのものでしかありません。
もちろん必要なときに使えるよう、その「かき方」や「使い方」を正しく学ぶ、ことだけは大切にしておいてください。
ではお待たせしました。例7、例19の解説です。「分配算」や「相当算」ではないと気付くことで、下のような解き方になります。
さて、結局これらは「ーー算」だった訳ですが、何も知らなければ驚くほど難しい問題です。特に例19など、こんな問題を、まだ「割合」しか学んでいない子に解かせる方がどうにかしています。「比」を学んだ生徒でも、これらが「ーー算」である、と気付かない限り解けるものではないでしょう(ーーはPDF内にあります)。
更に、この2つの問題はまだ簡単な計算で済みましたが、中にはいくら比(整数)で表しても途中の計算に分数が出てくることもあり、そのようなときは本当に正しく解いているのか不安にもなります。それでも「比」と「線分図」をうまく使いこなすことで、なるべく分かりやすく解けるようにする訳です。
しかしながら、この2題のような問題が「ーー算」の単元として扱われることはほとんどありません。
「ーー算」の単元にはその基本の使い方は載っていますが、このような問題は別の単元に紛れて載っていることがほとんどです。そしてそれが「特殊算」すべてを難しく考えてしまう原因にもなっています。
結果、意味も分からず教えられ、何となく分かった気になるけど自分では解けないと言うことも多く、出題された場合にはいまだに難問として扱われていたりもします。
本来、他の要素を含む問題については、○○算(○○の単元)に見えるけど、△△を用いる問題、などと立て分けて捉えられるよう仕向けていけば良いだけであり、難問と言われるものにもそれなりの解き方が準備されているのが「算数」の深いところなのですが。
そもそもが「算数」全般において、学びの流れや問題の分類の仕方などを自ら研究することもなく、昭和の後半から平成初期に形作られてしまった今現在のテキスト等に書かれていることを、そのまま鵜呑みにして疑いもなく教える方がおかしいと気付いて欲しいものです。
さて、これで「線分図」系のおよその問題は終了です。
大まかに「線分図」系の問題を分類すると、
1。全体量が分かっているもの→分配算(差分配、比分配、混合分配算)
2。全体量が分かっていないもの(全体量を求めるもの)→相当算(大半が割合で解ける)
3。和が一定のもの→和一定
4。差が一定のもの→差一定
5。和も差も(結果も)一定ではないもの→倍数算
6。各単元に難問として紛れ込んでいるもの→ーー算
となります。もちろんこれは「大まかに」分類した場合であり、これらを組み合わせた更に難しい問題を解くために覚えておくと良いもの、と考えてください。
それでは次回から、「つるかめ算」などの「面積図」系の問題を扱っていきます。
その前に、2024年度「女子学院中学校」の入試問題をまずは1問紹介しておきましょう。
この問題をどのように解けば良いのか、考えてみてください。解説は次回行います。
尚、ブログ内の入試問題はすべて使用許諾取得済みです。
問題
□にあてはまる数を入れ、【 】内はいずれかを○で囲みなさい。
1個430円のケーキと1個180円のクッキーを買います。ケーキは必ず箱に入れ、箱は1箱20円で2個まで入れることができます。ケーキとクッキーを合わせて19個買ったとき、箱代を含めた代金の合計は6290円でした。買ったケーキの個数は
【 偶数 , 奇数 】で、⬜︎個です。
さてさて、またまた冬期講座が始まります。今年のブログはこれで終わりです。
次回更新は、来年1月23日(木)を予定しています。
それではまた!
良いお年を!!
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