算数と数学44 ニュートン算
- suugakusha
- 9月25日
- 読了時間: 7分
更新日:9月29日
算数と数学44 ニュートン算
こんにちは!
さて、今回は「ニュートン算」のお話です。
「ニュートン算」とは、ある一定の何かがもともとあり、更に単位時間当たりの量が増え続けますが、それらを何らかの形で消化して0にしようと試みる問題です。
と、上のように書いてもまったく意味が分からないと思いますので、基本問題を使って説明します。
その前に。
「ニュートン算」とは言いますが、かの有名なニュートンとはまったく無関係です。
この「ニュートン算」は、少なくとも昭和50年代には出題されています。が、それ以前に出題されていたかどうかは確認できていません。
「ニュートン算」自体、理解してしまえば面積図系問題の中で最も簡単なものなので、頻繫に出題されるようになってからの記憶しか残っていないようです。
私が東京から大量に持ってきた入試問題(各中学校の実物)の中にも、牛が何頭かいて草を食べる問題、金魚が数匹いてプランクトンを食べる問題、遊園地の開園前から並んでいる人を入園させる問題などなどが確認できていますが、それらすべてが昭和50年代半ば以降に出題された問題です。昭和55年以前(今現在にも継続して使われる良問が限られていた時代)の入試問題はなかなか使う機会もなく、未だに段ボールの中で熟睡しています。これをすべて調べたら何か分かるかもですが・・・
それでは「ニュートン算」の問題を紹介します。
「単位あたりの量」×「単位」=「全体量」
の考え方を用いるのはこれまでの面積図系問題と変わりません。
例38(ニュートン算)
朝9時から開園する遊園地には開園前から人が並び、更に新たに並ぶ人が一定の割合で増え続けています。ちょうど9時になったとき、入り口を3つにすると、並んでいるすべての人が入るまでに2時間かかり、入り口を5つにすると40分かかります。
入り口1つにつき、1分ごとに4人の人が入園できるものとしたとき、次の問いに答えなさい。ただし、並んでいるすべての人が入り、一旦0人になった時点で、新たに並ぶ人を並んでいるとは言いません。
(1)入り口を8つにすると、並んでいるすべての人が入るまでに何分かかりますか。
(2)並んでいるすべての人が20分で入れるようにするには、入り口をいくつにすれば良いですか。
一般的に「ニュートン算」の最終問題は上の(1)か(2)のようなものですが、下の問題のように細かく答えさせる小問になっていることもあります。
【1】新たに並ぶ人は1分ごとに何人いますか。
【2】ちょうど朝9時の開園時に並んでいた人は何人ですか。
この小問2つは、解き順通りの誘導問題となっています。問題がこの順番でないときでも、基本の解法ではこの順番で解くことになります。
基本の解法(考え方)
この問題では、入り口の数を、1分ごと(1分あたり)に入園できる人数にして考えた方が分かりやすいのでこれを用いて説明します。人数にせず入り口の数でも同様の方法で解くことができます。
入り口が3つのときは1分あたり12人(4×3=12)、入り口が5つのときは1分あたり20人(4×5=20)の人が入園できます。
まずは、問題文で与えられた2つの積を求めます。
12×120=1440(人)←入り口が3つのときの総入園者数
20×40=800(人)←入り口が5つのときの総入園者数
積=総入園者数が異なりますね。この総入園者数とは、並んでいる人が一旦0人になるまでの入園者数のことです。その後新たに並ぶ人は含みません。
なぜこのような違いがあるのでしょうか。
入り口の数が少ないと、その分時間がかかります。
その時間の分だけ「新たに並ぶ人が増える」ためです。
よって、この入園者数の差を
120ー40=80(分)←入り口が3つのときと5つのときの時間の差
でわることで、「新たに並ぶ人」の1分あたりの人数が求められます。
(1440ー800)÷(120ー40)=8(人/分)
これが上【1】の答えになります。
入り口の数で言えば、入り口2つ分(8÷4=2)は新たに並ぶ人に使われると考えます。
1分あたりの人数にせず、入り口の数でも計算ができることを確かめてみましょう。
3×120=360
5×40=200
(360ー200)÷(120ー40)=2(口)
入り口の数ちょうど2つ分の人数が新たに並ぶ人の数と分かります。
よって4×2=8(人/分)
とすれば同じ答えを求めることができます。
これさえ求めてしまえばあとは簡単です。
上の【2】は
入り口が3つのときでは
1440ー8×120=480(人)
(または(12ー8)×120=480(人))
入り口が5つのときでは
800ー8×40=480(人)
(または(20ー8)×40=480(人))
と、総入園者数から新たに並んだ人数を引くこと(または「単位あたりの量の差×単位」)で、開園時に並んでいた人数を求めることができます。もちろん入り口の数で計算しても同様の答えが出せますので確かめてみてください。
(1)(2)は、この、【1】、【2】を求めてから、題意に沿って解いていきます。
(1)
入り口が8つのとき、新たに並ぶ人に入り口2つ分を使うことになるので、9時の開園時に初めから並んでいた人数480人には、入り口6つ分(8-2=6)使えることになります。
入り口6つ分の1分間で入れる人数は、
4×6=24(人/分)
よって
480÷24=20(分)
これが(1)の答えになります。
(2)
9時の開園時に初めから並んでいた人数を時間でわります。
480÷20=24(人/分)
24÷4=6(口)
これが、初めから並んでいた人に使われる入り口の数なので、これに、新たに並ぶ人に使う分の2口を加えることで、必要な入り口の数が求められます。
6+2=8(口)
これが(2)の答えとなります。
この部分の計算は
(24+8)÷4=8(口)としても構いません。
さて、いかがでしょうか。
「ニュートン算」は意味さえ理解してしまえばこのようにあっさりと簡単に解ける問題です。上の考え方をきちんと理解できている子にとっては「面積図」などまったく不要な問題と言えます。全国どこでも、この「基本の解法(考え方)」は共通でしょう。
ただ、中にはこのような説明だけでは理解できない子もいます。
たすのかひくのかかけるのかわるのか、文の読み取りとしてそこが苦手な子のための説明に使うのが所謂(説明で用いる)「面積図」です。つまり「面積図系問題」であることを前提とすることで、すべての子の理解に繋がることを目的として作ったものです。
下の「面積図」は、問題の考え方そのままを図に表していることが分かると思います。
解くときには使いたければ使うと言う程度のものと思ってください。
この「面積図」を作った40年以上前には「比と面積図」による解法が主流であったため、同時に次のような「比と面積図による解法」も作りました。当時はこっちの方がいい、と言う生徒もたくさんいました。これは「面積図」に慣れている生徒であれば意味が分かっていなくても答えが出せるものです。「比と線分図」、「比と面積図」などの本来の使い方を学ぶ機会が少なくなった今では主流の解き方ではありません。
この解法を見ても、「ニュートン算」は「面責図系問題」であることがはっきりと分かります。ただし、この解法の中の「赤い部分の長方形を考えなくても②→2は分かるのでは?」と気付いた方もいるでしょう。
大正解です。今回は「ニュートン算」の基本問題だけを扱いましたが、この「ニュートン算」にもいくつかの応用問題が存在します。そのときにこの赤い長方形の部分に着目することで・・・
さて、これらの「ニュートン算」の2つの「面積図」も、当時勤めていた予備校には渡していません。よって、この「説明で用いる面積図」と「比と面積図による解法」は広範囲に知られることもなく時が過ぎ去ったようです。今回この2つの基本の面積図だけは公開しましたが、この先はまた(何年後になるか分かりませんが)別の機会にしたいと思います。
(この2つの「面積図」は使用しても構いませんが、営利目的での利用はお控えください)
ネット上には「ニュートン算」の様々な説明が見られます。これほど説明がバラバラな問題はなかなかありません。そもそも「ニュートン算」が「面積図系問題」であること自体、まったくと言っていいほど知られていません。
「算数と数学38 つるかめ算(1)」の冒頭で示した
「面積図」は「単位あたりの量」×「単位」=「全体量」の関係を用いる問題のほんの一部で使われるもの
と言うことが共通認識となっていないことが一つの原因と言えるでしょう。この、どのような問題に対してどのような考え方を用いるのか(「線分図系問題」と「面積図系問題」の明確な違いなど)、についてもまた、知られざるものとなっているようです。
算数には、様々なことに気付くことで解法が見えてくるものがあり、それらを正しく学ぶことが「組み合わせられた多数の応用問題」にも対応できる力を養う一助となります。
さて、いかがでしたか。
この「ニュートン算」で「面積図系問題」は終了です。
次回は「面積図系問題のまとめ」となります。
次の更新は、10月23日(木)頃を予定しています。
それではまた!

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