算数と数学43 平均算(2)
- suugakusha
- 7月10日
- 読了時間: 9分
算数と数学43 平均算(2)
こんにちは!
今回は「平均算」の続きです。
では早速、前回示した例34(4)を、「※これまでに学んだある解法」で解いてみましょう。
例34(平均算)
(4)国語と算数のテストを全部で10回行いました。国語の平均点は76点、算数の平均点は86点、国語と算数2教科の平均点は80点でした。算数のテストの回数を求めなさい。
解
国語と算数2教科10回分の平均点が80点なので、合計点は800(80×10=800)点です。
すでにほとんどの方が気付いていたと思いますが、たったこれだけで「つるかめ算」になることが分かると思います。
算数の点数を求めたいので国語の点数に合わせて「つるかめ算」の計算をします。
(800-76×10)÷(86-76)=4
(2教科の合計点と国語10回分との点数の差)÷(算数と国語の平均点の差)
(4)は「平均」の基本計算だけでは解けず「平均算を教えるにはちょうど良い問題」なのですが、このように「つるかめ算」で解けてしまえます。
ん?では「平均算」の解き方っていらない?
では逆に、「つるかめ算」を「平均算」で解くことはできないのでしょうか。
以前解いた問題を見てみましょう。
例20
イカとタコが合わせて20匹います。足の数は全部で178本です。1匹あたりの足の本数は、イカが10本、タコが8本です。イカとタコはそれぞれ何匹いますか。
20匹で178本の足なので、1匹あたりの足の本数の平均は8.9本です。
面積図を用いずに解いてみます。もちろん「面積図」を使っても構いません。
(8.9はタコの8本に近いので、タコの方が多かった、と分かってくれば計算だけで済みます)
(10-8.9):(8.9-8)
=1.1:0.9
=11:9
(「平均」に対して、イカ側から、タコ側から、どれだけ離れているかを表しています)
この「逆比」をとることでイカとタコの匹数の比になります。よって
イカの数:タコの数=9:11
⑨+⑪=⑳→20匹
①→1匹
⑨→9匹
イカが9匹と答えが出ました。確かめをすれば正しいことが分かります。
実はこれも「つるかめ算」の解き方の一つです。
ん?では「つるかめ算」の解き方っていらない?
もちろんそのようなことはありません。
「つるかめ算」の考え方はさまざまなところで応用できる優れもの。
同様に、「平均算」の考え方もとてもたくさんの問題に応用できる重要なアイテムです。
同じ問題でも異なる解き方が使えるものがある。
このような問題は算数には数多くあります。
2つ以上の解き方がある場合、例えば例34が「つるかめ算」の単元にあれば、それは「つるかめ算」としての解法を身に付けるものとして、「平均算」の単元にあれば、「平均算」としての解法を身に付けるものとして捉えれば良いだけです。例20も同様にどちらに含めても構いません。
「線分図」系問題、「面積図」系問題のみならず、算数の様々な問題は「考え方」「解き方」とセットで分けるべきであることが良く分かる事例でしょう。問題の「見た目」だけで分類することは「算数」の本質からかけ離れたものとなります。
もちろん「算数」の様々な問題には「定番」と言われる解き方があり、上の「平均算」の解き方や「つるかめ算」の解き方もその一つです。
一般的に例20のような問題は「つるかめ算」、例34のような問題は「平均算」の単元に含まれているのは、その「定番」の解き方を覚えるためです。
これらを一つ一つ覚えることによって、更に多くの問題に対応できるようになっていきます。
さて、次に、わざわざ「平均算」で解く必要のない問題と、「平均算」の考え方が必要となる問題を織り交ぜながら、一例として紹介します。
↑
これだけでは何を言っているのかわからないので、まずは下の問題を解いてみてください。
「食塩水」の問題ですが、「濃度(%)」の基本は理解しているものとします。
例35
(1)水に食塩を加えて20%の食塩水を500g作りました。使った水の量は何gですか。
(2)400gの水に食塩を加えて20%の食塩水を作りました。何gの食塩を加えましたか。
(1)も(2)も「割合」を用いて解く最も基本的な問題です。「割合」「百分率」「歩合」等をしっかりと学んでから「食塩水」の問題を解きます。(1)はできても(2)のような問題が苦手な子もいます。
(1)解1
500×0.2=100
500-100=400 答え400g
解2
500×(1ー0.2)=400 答え400g
解1のような、食塩の量を求める解き方だけではなく、解2のような、水の量が全体の80%にあたることを用いる解き方の大切さも学びます。
(2)変わらない水の量の割合で考えます。(1)解2の大切さが分かります。
20%の食塩水=水の割合は80%
食塩を加えても水の量は変わらないので、400gがその80%にあたります。よって
400÷0.8=500
500ー400=100 答え100g
(3)水と食塩を混ぜて20%の食塩水を作りました。使った水と食塩の量の比を求めなさい。
さて・・・この(3)はどのように解けば良いのでしょう?
以下の問題の中にも、どのように解けば良いか悩む問題はありませんか?
全部難しい、と言わず解いてみてください♪
例36
(1)20%の食塩水に水を加え、12%の食塩水を500g作りました。
最初20%の食塩水は何gありましたか。
(2)20%の食塩水300gに水を加え、12%の食塩水を作りました。
何gの水を加えましたか。
(3)20%の食塩水に200gの水を加えたところ、12%の食塩水ができました。
最初20%の食塩水は何gありましたか。
(4)12%の食塩水を蒸発させて20%の食塩水を300g作りました。
最初12%の食塩水は何gありましたか。
(5)12%の食塩水500gを蒸発させて20%の食塩水にしたいと思います。
蒸発させる量を何gにすれば良いですか。
(6)12%の食塩水があります。この食塩水を蒸発させたら重さが200g減り、20%の食塩水になりました。最初12%の食塩水は何gありましたか。
(7)12%の食塩水に食塩を加えて20%の食塩水を330g作りました。
最初12%の食塩水は何gありましたか。
(8)12%の食塩水300gに食塩を加えて20%の食塩水にしたいと思います。
何gの食塩を加えましたか。
(9)12%の食塩水に食塩を30g加えたところ、食塩水の濃度が20%になりました。
最初12%の食塩水は何gありましたか。
そして次は2種類の食塩水を混ぜる問題です。
例37
(1)8%の食塩水200gと20%の食塩水100gを混ぜると何%の食塩水になりますか。
(2)8%の食塩水200gとある濃度の食塩水を混ぜたら12%の食塩水が300gできました。何%の食塩水を混ぜましたか。
(3)8%の食塩水に20%の食塩水100gを混ぜて12%の食塩水を作ります。
8%の食塩水は何g使いますか。
(4)8%の食塩水と20%の食塩水を混ぜて12%の食塩水を300g作ります。
8%の食塩水は何g使いますか。
これら食塩水の問題を苦手とする子はたくさんいます。
「割合」が苦手な子はほぼすべての問題を苦手としますが、上の問題の中には「割合」の計算だけでは解けない問題もあり、その区別がされていないことで食塩水の問題は難しい、と、全体的に苦手としてしまうことも多いのです。
例36の(1)(2)(4)(5)(7)(8)
例37の(1)(2)
この8問は「割合」「食塩水」の単元(Aとします)に含められますが、
例36の(3)(6)(9)、例37の(3)(4)の5問は、「平均算」(Bとします)の考え方が必要となるので、まだ「平均算」を学んでいない場合解ける訳がありません。
まずは例36Aの6問の簡単な説明と式だけを示しておきます。これは「割合」「食塩水」の単元で、「変わらない量」に着目する問題として扱われます。
(1)水を加えても食塩の量は変わらないので
500×0.12=60(←食塩の量:もとにする量×割合=比べられる量、以下同)
60÷0.2=300(←食塩水の量:比べられる量÷割合=もとにする量、以下同)
(2)同様に
300×0.2=60
60÷0.12=500
500ー300=200
(4)蒸発させても食塩の量は変わらないので
300×0.2=60
60÷0.12=500
(5)同様に
500×0.12=60
60÷0.2=300
500ー300=200
(7)食塩を加えても水の量は変わらないので
330×(1ー0.2)=264
264÷(1ー0.12)=300
(8)同様に
300×(1ー0.12)=264
264÷(1ー0.2)=330
330ー300=30
次に例37Aの2問です。
2つの異なる濃度の食塩水を混ぜるので、変わらない量はありません。よって食塩の量と食塩水の量(全体量)を求めてから基本の計算を行います。
(1)200×0.08+100×0.2=36(←食塩の量)
36÷(200+100)×100=12(←濃度)
(2)300×0.12ー200×0.08=20(←食塩の量)
20÷(300ー200)×100=20(←濃度)
この8問だけでも結構難しいですね。
本来、「割合」「食塩水」の単元に含めて良いのは、このA8問のような問題だけです。
そもそもがB5問は「割合」の基本計算では解けず、考え方、解き方が異なるのです。
例35(3)を例にとり、何を身に付けて欲しいか、によって、同じ問題でもどの単元に含めるかが変わることを示しましょう(2単元に入れても構いません)。
例35(3)
解1(「割合」としての解法)
20%の食塩水の量(全体量)を「1」とおき、
・小数を用いると
1×0.2=0.2(←食塩の割合)
1ー0.2=0.8(←水の割合)
0.8:0.2=4:1
・分数を用いると
20%=0.2=1/5(5ぶんの1、食塩の割合)
1ー1/5=4/5(5ぶんの4、水の割合)
1/5:4/5=1:4
これが理解できる子にはこの説明で十分な問題だった訳ですが、さてどうでしょう。
この説明では良く分からない、と言う場合、適当な値、例えば20%の食塩水が100gできたものとする、と考えれば
100×0.2=20(←食塩の量)
100ー20=80(←水の量)
80:20=4:1
などで解くこともできます。
が、なぜ適当な値をおいても同じ答えになるのか、の理解には、他の単元も含めた解説を必要とします。また、例36,37のB5問は、適当な値をおくこともできません。
解2(「平均算」としての解法)
水や食塩は食塩水とは言えませんが、水は食塩の量が0%、食塩は100%です。
食塩水の問題は「平均」を考えることと同じであると理解させた上で、「平均算」の考え方が使えることを示します。
20ー0=20(0%の水側からどれだけ離れているか)
100ー20=80(100%の食塩側からどれだけ離れているか)
20:80=1:4
その逆比をとり、4:1(←答え:水の量と食塩の量の比)
下のような「面積図」を用いて、一番の基本である、土地の高低を揃えることと同じ、と気付かせても良いでしょう。
さて、では例36、37のB5問です。
例36
(3)20ー12=8
12ー0=12
8:12=2:3
よって20%の食塩水と水の量の比は3:2(逆比)
②→200g(←水の量)
①→100g
③→300g(←20%の食塩水の量)
「平均算」を計算だけで解くと上のようになりますが、「面積図」を使っても解いてみましょう。ダラダラ計算を見るより理解しやすいと思います。
ところで・・・例35(3)は「割合」で解くか「平均算」で解くかで分ければ良い(または2つの単元に入れても良い)ことと同様に、例35(1)(2)や例36,37のA8問も、「割合」ではなく「平均算」を用いて解くならば、「平均算」に含めてもまったく問題ありません。「面積図」を利用した場合、それぞれ同じ解き順(与えられた値と求める値が違うだけ)になることが分かります。
結局のところ、「解き方の違いが分類の基準」であることは、これまで紹介したすべての問題に共通することです。
さてさて、このように「食塩水」の問題にも「平均算」の考え方が出てきましたが、これはほんの一例です。「平均算」の考え方である、「積一定」ならば「逆比」が使える、ことは、実に多様な問題に利用できるのでしっかりと身に付けておいて欲しいものです。
(繰り返しになりますが、「積一定」の「積」は基本「最小公倍数」であることは忘れずに!)
尚、次のような、食塩水の一部を水と取り替える問題もありますが・・・
20%の食塩水が300gあります。この食塩水の一部を捨てて、捨てた食塩水の量と同じ量の水を加えたら、12%になりました。何gの食塩水を水と交換しましたか。
この問題は、「20%の食塩水に水を加えて12%の食塩水を300g作る問題」と同じ、と考えれば確かに「割合」でも「平均算」でも解けますね(解き方は省略します)。
が、最終的には、次のような計算で済むことを覚えれば、最も簡単な問題の一つになります。
解
20ー12=8
300×8/20=120(←答え)
説明には下のような「図」を用いますが、「単位あたりの量」×「単位」=「全体量」を用いた、算数における一般的な「面積図」ではありません。最も原始的な「図」です。
最後は「平均算」とは無関係な問題になりましたが、「平均算」の基本は理解できたでしょうか。
「食塩水」の問題だけでなく、もっといろいろな問題を紹介したいところですが、「平均算」はここまでになります。
さて、夏期講座が目前に迫っています。
また少し間が空きますが、次回更新は、9月25日(木)を予定しています。
それではまた!!
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